「それは宗教、信仰と同じではないですか?」小林泰三、セピア色の凄惨を読了。





「それは宗教、信仰と同じではないですか?」小林泰三、セピア色の凄惨を読了。

小林泰三著書、セピア色の凄惨を読了したので、ネタバレを含む感想文を書こうと筆を走らせています。

まず本作のお話をする前に小林泰三氏が描く作品の特徴について触れて見たいと思う。

小林泰三氏の描く人物。

氏の描く登場人物は中々に強烈なキャラクターを持つ。

一言では表せないが、僕が彼らに抱く感情として「異質」

例えば、今回の作品では主要となる人物が都合6人ほどだが、その内五人は「異質」であり、その「異質」を際立たせる為に読者の抱く感情をトレースする存在として「同質」な一人が紛れ込む。

しかし、読み進めるとどうにも「異質」な存在のはずが僕ら読者含め「同質」な一人が「狂っている」のではないか?と感じ始めることになる。

人と違っている事が果たして「何をもって違っている/変わっている」のか?を非常に考えさせられる事になる。

各々にクセと毒がミックスされ魅力的な存在感を醸し出し僕らを「異質」と「同質」の狭間へとジワジワ引き摺り込む。

小林泰三氏の描く世界観。

市の世界観は様々で、いろんな表現で僕らを本の中へ誘ってくれる。

例えば異星探索に行くと妖怪が出る物語。「試作品三号」(百舌鳥先生のアトリエに収録)

例えば時間感覚を司る器官を壊し、意識が途切れる度に全く違う時間で目覚める。「酔歩する男」(玩具修理者に収録、こっちの方が面白いと僕は思う)

例えば渡せなかった妻へのラブレターを紐解いて夫が独白するラブストーリー「妻への三通の告白」

氏の世界観は「似ている」というものが少ない、もちろん癖や表現などが氏のものであるが、それでも「これは〜〜のパロディ」と受け取れるもの以外で似ている作品はあまり見かけた事がない。


さて、本作の話に戻ろう。

今回の作品はある探偵事務所に一人の女性が依頼を持って訪れる場面から始まる。

屁理屈の多い探偵と依頼主の噛み合わないやりとりがあり、本題の依頼となる。

「親友のレイを探して欲しい」とのこと。

親友であるはずが、記憶があまり無い依頼主はどうにも持参した「4枚の写真」の場面のみは覚えているものの、それ以外の情報が無い。
住所
苗字
昔遊んだ場所が分からない。

ただ4枚の写真の場面のみ。
しかし限られた情報量ながら探偵は依頼を受け4枚の写真に写る4人に聞き込みをはじめる。

一人目は運命の愛を求めた男の物語。「待つ女」

二人目は怠惰の権化と言っていい女の物語。「ものぐさ」

三人目は不安を潰して生きる女の物語。「安心」

四人目はだんじりに命をかける街で育った少年の物語。「英雄」


エピローグ。

の構成となっている。

どのお話も中々に強烈でありながら、大阪府民の僕がどうにも心惹かれ、そして考えを改めさせられた「英雄」の話をしよう。

だんじりに文字通り「命」をかける街で生まれた主人公は幼い頃にコントロールを失っただんじりにより父親が無残な姿となり、それからはだんじりから距離を置いて生活をする。

このだんじりでは怪我人、しかも後遺症や部位切断などは当たり前、死ねば英雄という扱いとなり、主人公の父親も避ければ生きれたのだが、「逃げたら漢やない」とだんじりの直撃を受け死亡する。

主人公が小学生のころ、だんじりで死んだ主人公の父親を馬鹿にした(だんじりで死んだとは知らなかった)同じクラスの男の子は、馬鹿にしたことが大人の耳に入り、半殺しにされかける。
だが、主人公が土下座をしてなんとか阻止できる。
それほどにだんじりに対しての熱がすごいのだ。

ここまで読んでみて思うことには「だんじりにそこまで命をかけるって頭おかしいんじゃないか?」なのだが、ここで今回のタイトルとなる「それは宗教、信仰と同じではないですか?」である。

僕らは「命よりも大切なモノは無い」と思っていてそれが当然、そして、そう思わない人間を遮断する。

ところが、考えてもみて欲しい。

「だんじりより大切なモノは無い」とどう違うのだろうか?

自分にとって「大切なもの」は人とは違うはずであり、命よりも大切なものを存在しないと思うことは、まるで宗教のようでは無いだろうか?
宗教を揶揄しているのではなく「何かを信じる」という点において、自分の信じるモノ以外を遮断し、押し付けようとする行為はまるで「布教」のように思える。

僕らは僕らの「常識」「思想」「経験」を個々に持っている、だが、それらを人に押し付ける事は教える、経験則として話すのは除くとして、相手のそれらが根本的に違う時、相手を滑稽に、時に野蛮に見えるメガネをかけているのでは無いだろうか?

作品に話を戻すが、最終的に主人公が選んだ道を僕は尊重している。


オススメ度

今回の「セピア色の凄惨」のオススメ度は星4つだ。

4人の物語一つ一つが全く毛色の違うモノで非常に楽しめる作品だが、ラストについては小林泰三氏の他作品のオマージュ(密室殺人?)となっている為初見ではラストは分かりづらいかな?と思いましたね。







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